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2007’03.14・Wed

「Bird's song」

アサコノSS(1)
地味に続きます……。
アサコノ書いてるとすごい幸せな気持ちになる。ほんわ~







「Bird's song」

吉良でアサトと暮らすようになってから、早一年が過ぎようとしている。
正直、住み始めの頃はなかなか吉良での暮らしに慣れなかった。
アサトの住みかで二匹だけでいるときはいい。
落ち着くし、あったかい。
ただやはり、吉良の中でアサトへと注がれる猫たちからの視線は冷めたものだった。
アサトは全く気にしていないようだが、おれはそうもいかない。
部外者であった自分のことはどう思われたって構わないけれど、自分の大切な猫のことを同じように大切に想ってほしいというのは欲張りすぎることなのだろうか。
やりきれない思いを抱えながら、コノエはこの一年を過ごしてきた。
その間に、おれもこの村に随分と慣れることができたと思う。
村の猫たちの視線も、以前と比べたら随分和らいできたかもしれない。
そのことをアサトが嬉しいと言う。
そう言って笑うアサトを見れることが、おれを何よりも喜ばせた。
けれど、いくら吉良での暮らしに慣れたからとはいえ、小屋に一匹だけというのは心もとないものだ。
それだけに
「コノエ」
相方の帰宅はいつだって嬉しいことだった。
「おかえり」
アサトの気配に、自然と耳が立ってしまう。
振り返った先には、今朝方出ていった時と同じままのアサトが立っていた。
身体を片手で支えて器用に立ち上がり、アサトの方へと近寄っていく。
そして自分より少し高い位置にあるアサトの肩に頬をすりよせて、くるると喉を鳴らした。
「今日の収穫はどうだった?」
数時間ぶりのアサトのぬくもりに触れながら問いかける。
「……」
しかし、返ってこない言葉。
「?」
アサトから反応が返ってこないことを不思議に思い、コノエは顔を見上げた。
それに気のせいか、アサトの身体が強張っている気もするような。
「アサト……?」
訝しげにアサトの顔を覗きこむと、アサトが口を開いた。
「コノエ、下」
「下?」
言われたとおり下を見る。
「……って、どうしたんだ……ソレ」
おれの視線を釘付けにした存在。
固まったアサトの両手の中にいたのは、一羽の小鳥だった。
「そこの道で拾った」
「拾ったって……うわ、血が出てる」
アサトの手のひらに乗っている小鳥の羽からは血が滲んでいた。
血の量はそこまで多いわけではないと思うけれど、無事というわけでもないだろう。
今のアサトの雰囲気からして、こいつを食料として捕ってきたとも思えない。
そもそも今日は生き物を狩りに行く日ではなかったからおれが留守番していたわけだし。
と、とにかく。
「大丈夫か?そいつ」
「分からない。ただ、放っておけなかった」
そう言って視線だけを小鳥に向ける。
小鳥はアサトの手の中で目を瞑って動かなかった。
「とりあえず入れよ」
「ああ」
先ほどから小鳥同様、全く動かないアサトを促して、小屋へと入れることにした。
「鳥はこっちに寝かせよう。あ、そうだ。ちょっと待ってろよ」
たしか此処らへんに要らない布切れがあったはずだ。
がさごそと壷の中をあさり、お目当ての布切れを引っ張り出す。
「ほら、ここに寝かせるといい」
「すまない」
「いいって」
床の上に布を何重かにして敷いてやる。
そこにアサトがそっと小鳥を置いた。
すぐそばにおれとアサトもしゃがみ込む。
「……飛べるのかな」
弱りきっている小鳥の頭を爪先でそっと撫でてみた。
小鳥の体は小さく呼吸を繰り返すばかりだ。
か細い、呼吸を。
ふと、脳裏にあの時のことが甦る。
傷だらけで横たわる死にかけの獣姿――――







「大丈夫だろう」
アサトの声にハッと我に返る。
気付いた時には、額に嫌な汗をかいていた。
大丈夫、大丈夫だ。
アサトは今、おれの隣にいる。
おれの隣に、ちゃんといる。
それでもコノエの身体の微かな震えは止まらなかった。
「コノエ」
過去の恐怖に震えるコノエの肩をアサトがやさしく抱き寄せる。
「心配するな。こいつは、飛べる」
コノエを励ますように微笑むアサト。
その微笑みを見た瞬間、驚くほどにほっとしている自分に気付いた。
「そう、だな」
アサトの笑顔には力があるとおれは思う。
アサトの笑顔を見た瞬間、不安や哀しみ、そういったマイナスの感情が全て溶けて消えるのだ。
今だってそうだ。
こんなにも落ち着くことができた。
「……」
力を抜いてアサトに身体を預ける。
アサトが拾ってきたこいつを、アサトと被って見えたこいつを、おれは放っておけないと思った。
「……何か食べるかな」
「ああ。目を覚ましたら何か与えてみよう」
「……ん、そうだな」
大切な存在の温もりに包まれながら小鳥を見守る。
それからしばらく、おれたちはそのまま動かずにいた。

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